今年は個人戦の競技会の代わりに「ローストマスターズチャンピオンシップ」という
全国を5つの地域に分けたチーム戦の競技会に参加します。
こちらもコンペではありますが、ワークショップ的な意味合いも強く、地域ロースターの技術交流の場ともなっています。
今年のお題の豆はブラジルのカップオブエクセレンスという品評会で入賞したコーヒーです。
与えれた生豆を各チーム思い思いに仕上げて提出。
審査はSCAJカンファレンスの3日目に特設ステージにて公開で行われます。
今年から一部ルールが変更され、招待審査員部門はそのままに、一般審査員部門が廃止されました。これに関しては、そもそもあの場にいる人達の「一般」性が怪しかったり(笑)、また一般審査員部門と招待審査員部門とで抽出法が異なるため(濾過式と浸漬式)作った我々が飲んでも評価が逆転する事も多く(焙煎のミスを気合いの抽出でうっちゃりかましたり)、分ける必要が本当にあるのかどうか議論があったのかもしれません。
もうひとつの変更点は今年は単に順位を決めるだけでなく、カッピングをしながら審査員や他のチーム間とで焙煎に関するディスカッションを行う事。そしてその討論に、チームメンバーだけでなく、ご来場の方々も審査員のカップに比較的近いプレス抽出のコーヒーを飲みながら疑似的に参加する事ができます。これはとても面白い取り組みですね。今からとても楽しみです。
今年の九州チームには福岡からあだちコーヒーさん、オオカミコーヒーさん、タウンスクエアコーヒーロースターさん、コーヒーカウンティさん、珈琲蘭館さん、豆香洞コーヒー。熊本から南阿蘇珈琲さん。鹿児島のヴォアラコーヒーさんの8店舗が参加します。「いつものメンバー」で心強いものの、長崎や佐賀、大分、宮崎、沖縄のロースター、また新たなメンバーがいないのが少し寂しいです。扉は開いているのに、何ででしょう。私は開業一年目から参加しました。わからないなりにとても刺激になり、勉強になりました。今でも毎回得られるものがあります。参加に資格は要りません。焙煎について共に学びたいという気持ちさえあれば、若手もベテランも関係なく参加できる素敵なイベントだと思っています。「九州Bチーム」ができるくらい、もっと多くの地域のロースターに参加してもらって共に盛り上げていけたら嬉しいです。はい。
さてさて、初日は鹿児島のヴォアラコーヒーさんでミーティングとサンプルロースティングを行いました。
ミーティング後、各店舗の計11人のロースターが持ちまわりでテーマに沿ってサンプルを焼いていきます。ニハゼ終了から一分のコテコテフレンチ等も焼きました。coeのフレンチ、美味しかったですよー。
井ノ上さんのご厚意で35キロ、最新鋭の「スマートロースター」でも焼かせてもらいました。こういう機会も中々ありません。
サンプルロースターの豆をスマートで冷却。贅沢ですね。他にも秘密の方法で瞬間冷却などしてみたり、焙煎豆のクーリングに関しても色々と試しました。冷却は味づくりだけでなく、エイジングにも関わってくる部分でもあるので経時変化も追って検証します。
お昼を食べて少し観光。
これもRMCの醍醐味のうちの一つです。
霧島から鹿児島市内の店舗に移動してカッピング。
その結果より今後の方向性を決めます。
いく通りかこの豆に可能性を感じたのと、棚ぼた的な発見もありました。今年のチームのテーマを「とことん検証」に決め、「深める」よりも「探る」方向に舵を取っていく事に決めました。
二日目、三日目は場所を移して福岡へ。
豆に合った焙煎機の形式やプロファイルの違い、よく言われる「向き不向き」は本当にあるのか、等を検証すべく、ドイツ製の半熱風焙煎機とイタリア製の熱風焙煎機でパイロット用の豆を4種焼き、本焙煎ではその2つの釜×3つのプロファイルで味わいの傾向を探っていきました。
エイジング検証。
最後に皆で全てのカップをとり、どのカップを提出するかを話し合います。
最終的には2つのコーヒーに意見が分かれました。
ひとつのコーヒーはあるロースターさんが最後の最後に焼いた豆。
オーソドックスな焙煎ではありますが、愚直にひとつの道を極めていくとこうも良くなるのかと言った至高のカップでした。この豆で、この方向性で、これ以上は中々ないよねというカップ。勝ちに行くのであればこっちという意見が多かったです。ただ、同じプロファイルでいくつか焼いたうちの一つで差が付いていたと言うことは、再現性が高いとは言えないようです。真似しようにも真似できない、個人の技量に頼るところが大きい焙煎です。
もう一つは、スタンダードではあるものの、ある釜の使い方についての新しい解釈が含まれた焙煎です。また初日のサンプルの時に出た意見から作り上げたプロファイルですので、テーマとの一貫性もあります。カップクオリティとしては、荒削りではありますが、その釜では初めて使うプロファイルのわりに二回とも上のカップに近い、そこそこのものが出来て再現性は高いと言えます。
最終的には今年のテーマも含め、私たち九州チームらしいカップとして、後者のコーヒーを提出する事に決めました。このコーヒーはけして完成型ではありませんが、議論の余地が残った面白いカップだと思います。このコーヒーについて、またこの焙煎について、私たちはもっと知りたい事がたくさんあります。会場で多くの方に飲んでもらい、たくさんの意見を頂戴してさらに理解を深めていけたら幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
最後に。今回サンプルから含めると合計21バッチ焼きましたが、ただの一つも被ることなく、全てに焙煎の意図が反映されていて、そのおかげでほぼ完璧な検証が出来たと思います。チームメンバーの要求通りの物を作り上げる高い焙煎技術と、チーム方針に対する理解に感謝致します。