コーヒー鑑定士に合格しました



こんにちは、マスター後藤です。
先日JCQAの「コーヒー鑑定士」に合格致しました。

コーヒー鑑定士にはいくつか種類があります。ブラジルやコロンビア等のコーヒー生産国がそれぞれ独自に認定しているものの他、Qグレーダーの様に生産国と消費国の両方で通用する国際的な資格もあります。JCQAコーヒー鑑定士は全日本コーヒー商工組合連合会という日本のコーヒー業界団体が行っている「コーヒーインストラクター検定」の資格です。

コーヒーインストラクター検定では「2級」「1級」の上に「生豆鑑定(原料調達)」「商品設計(製造管理)」「品質管理」の独立したマスターコースが有ります。受けるコースは任意で選べ、3つ全てのコースで試験に合格すると「コーヒー鑑定士」に認定されます。

広く浅く、のインストラクターに比べると、広く深く、のマスターコースは難易度が高く、またコースによってそれぞれ違った専門性が求められます。数あるコーヒー関連の資格の中でも最難関の部類に入ると思いますが、その分講習の中で得られる物も多い資格です。2006年に始まって今年で11年目。現在19名の鑑定士が全国で活躍しています。
現在の取得状況

2014年から挑戦しています。初めての年は3つ受け合格出来たのは「商品設計」だけでした。
昨年残りの2つのコースに合格することが出来ました。
これもひとえに講師の方々や、多くのアドバイスをいただいた同期生の皆様のお陰です。
本当にありがとうございました。

資格は取るまでと取ってからが大切です。
今後も研鑽を続け、そこで得た知識を活かして、お客様により良いコーヒーをお届けして参ります。
どうぞよろしくお願いいたします。

大会に向けて(2)

焙煎には製品を作る「本焙煎」の他に、その前段階で「サンプルロースト」という工程があります。
サンプルローストは極少量の豆を焼くため、通常小さなそれ専用の機械を使います。
競技会ではサンプルローストで焼いた豆は審査の対象とはなりませんが、
それで生豆の素性やポテンシャルを測り、使う豆の選定や味作りの方向性を決めるので、実はかなり重要な工程となります。

今年の世界大会では韓国のメーカー3社がサンプルロースターを提供してくれています。
一つはオーソドックスなタイプです。
PROASTER THCR01
熱源はガスと電気があります。
会場にあるのはどちらでしょう。

残り2機種は電気式の少し変わったタイプです。
韓国の展示会で見ましたが、日本で販売していない事もあって使った事はありません。
その練習をするために先月は韓国にも行ってきました。

一つはこちら。
テグにあるメーカーが作っているCeroffee CRF-800という機械です。
ソウルの営業所にお邪魔して使わせていただきました。

おむすび型の可愛らしいマシンです。


斜めに設置された遠赤外線ヒーターの下を豆がコロコロ転がる面白い仕組みです。


マイコン制御です。
本体のタッチパネルやパソコンに繋げて色々な事が出来るようです。

もう一つはStrongholdというメーカーの機械です。

こちらも電気式です(熱源はハロゲンランプ)。


最新の電気式は細かなコントロールが効くものの、熱量や火の入り方がガスとは違うので注意が必要です。


お店のマシンを使って稽古を付けてくれたのは2012年の韓国チャンピオン、180CofeeRoastersの李さんです。
2013年の世界大会で共に競い合った仲間で、韓国に行った際にはいつもお世話になっています。

コーヒーの焙煎はとても地味で孤独な作業です。それは競技会でも同じです。
あまりに地味すぎて、日本大会は無観客試合、世界大会も他の部門の競技は全てインターネット中継があるのに焙煎部門だけそれが無い、くらいに地味です。
ただ、その裏の準備に関しては、本当に多くの方々に派手に参加・協力をいただいております。
私の時もそうでした。(初めての大会で分からない事が多すぎたため、もっと多くの方に手伝って頂きました)
実際に現地で渡された生豆を見て、釜の状態を見て、その場の感覚で全てを決めて行くのは選手一人ですが、
競技会というかなり特殊な環境で「普段通り」の感覚でもって作業を行うのはとても難しく「チーム」による準備や現場でのサポートが重要になってきます。

今まで色々な競技会に選手として、またお手伝いとして関わってきた中で感じてきた事の中に、
どの競技会にも会場には「準備が出来ている選手」とそうじゃない選手がいる、という事があります。
準備が出来ている選手は競技者に何が求められているか、自分がそこで何を為すべきかがはっきりと分かっているので、
段取りや競技を行う動きに淀みが無く、淡々と行っている様に見える競技の中に自信を感じることが出来ます。
逆にそうでない選手は「?」マークを抱えながら手探りで競技を行っている感じがあり、それがどこかに必ず出ています。
それは結果にも表れていて、極端な話ルールを知らなくても、現場で競技を見れば上位に残る方というのは、分かる方には分かるような気がします。

世界大会には各国の競技会の優勝者が集います。
とてつもなく高いスキルを持った上に、何を為べきかも皆当然分かっています。
全員が優勝候補と言って間違いは無いでしょう。
そのような中、本当に多くの方々の協力のお陰で、私達の代表も何とかスタートラインに並ぶ事が出来たと思います。
後は本人次第です。相手がある事なので結果をコントロールする事はできませんが、
気負わず、背伸びせず、準備した事だけを粛々とこなす事が出来れば、きっと良い焙煎が出来ると思います。

豆香洞競技心得三箇条(?)
 1. 120%以上の準備をする。
 2. 難しいことはせずに実力の80%を確実に出す。
 3. 結果を爽やかに受け入れる。
どれも簡単な事ではないけど、実際に全部出来れば最高だと思います。

大会に向けて(1)

こんにちはフクマメ店長です。怒濤のセールが終わりました。
期間中はお足元の悪い中、本当に多くの方に足を運んでいただきありがとうございました。

さて、いよいよ焙煎の世界大会まで残り1週間を切り、江口店長にも良い緊張感が出てきました。
彼は焙煎歴5~6年、焙煎士としてはフレッシュでまだこれからと言った所ではありますが、
世界大会には日本選手権(JCRC2014)の代表者という立場で挑戦するため、
恥ずかしい焙煎をすれば他の参加された競技者に申し訳が立ちません。
先日ブログで業務を一番大切に、とお伝えしましたが何もしていない訳ではなく、
その中でも私達に出来る限りの準備はしてきたつもりです。


営業後、隣の焙煎所の機械を使ってのトレーニングです。
彼は普段は別の機械(マイスター)を使って豆を焼いています。
同じギーセンでも大会で使用するモデルとは釜の大きさが違うので火力操作に対する反応等は少し異なりますが、
操作系には共通する部分が多いのでここで機械に慣れておきます。


生豆鑑定のトレーニングです。
水分や比重は本番と同じ専用の計測器を使います。
欠点豆の選別は種類と個数を目視で計測します。
毎日ハンドピック(ハンドソーティング)を行い生豆とは触れ合っているので落としたくない所です。
競技は業務とは別の、国際的な規格(SCAA方式)で判定されるのでその違いを確認します。


先月は東京にある代理店のギーセンジャパン様にて実機を使って2日間トレーニングを行いました。
(同社には私の世界大会挑戦時にも練習で大変お世話になりました)


使わせていただいたのは最新モデルです。
ソフト系の更新は早いもので、昨年購入した弊店の機械には無い、とても便利な機能が付いていました(涙)
大会で使われる物と全く同じものかどうかは分かりませんが容量は同じ6kgです。
様々なプロファイルを試してデータを蓄積していきます。


こちらは「クロップスター」という焙煎ログの計測・記録ソフトです。
下の電子レンジの様な機械は「カラートラック」という焙煎豆の色を計測する機械です。
競技では選手は焙煎作業を行いながら、これらを使い、温度やガスの計測結果や自身の作業工程をパソコンに入力していかなければいけません。
その記録されたデータを元に焙煎行程の正確度、再現性が採点されます。
クロップスターのソフト自体はとても使いやすいものの、ギーセンの操作画面にも似たような純正の操作・計測ソフトが稼働しており、
焙煎豆の状態を見ないといけない中、本体のタッチパネル2枚+パソコン画面を別々に操作しないといけない(しかもそれぞれに微妙にずれた温度と時間が出ている)
のは忙しなく、慣れないと混乱してしまいそうになります。(ちなみに私は本番で色々とトラブルも重なりこの部分で大きく減点されました。。)
直接味わいとは関係ない所なので取りこぼしたくないものです。


クロップスターの画面は動画で撮ってあります。
実際に焼ける機会は多くないので、この映像を見ながら頭の中で何度もシミュレーションを行います。
今回は作業工程と数値・グラフを2画面同時に録画しています。
私の時はipodでクロップスターの数字部分だけを撮り、それを見ながら70~80回妄想焙煎を繰り返しました。
行きの飛行機の中でも数時間ストップウォッチ片手に画面の数字を眺め続けていたので、
隣のご夫婦が不思議がって色々尋ねてきました;

(2)に続く

コーヒー屋として


チラシは今年も江口店長と配っています。
彼はローストの世界大会を来月に控えています。
本心は閉店後の時間はその練習や準備に全部使いたい事でしょう。
お店としても、商売の事だけ考えると、彼には練習に専念してもらい、
大会で好成績を収めてもらった方が良いのかもしれません。
けれども例年通り、普通に配ってもらっています。
営業時間後の数時間に及ぶポスティングは肉体的にも精神的にもとても大変です。
内心「日本チャンピオンになったのにまだ。。。」と思っているかもしれません。
しかし、残念ながら、これはたとえどんな立場になったとしてもやらないといけない大切な仕事なのです。
私たちはコーヒー屋であり、アスリートではありません。
競技会に出る理由はコーヒー屋である自分達の質を高めお客様に還元する事、それ以上の事はないと思っております。
コーヒー屋の本分はコーヒーを「売ること」です。作ることではありません。
そして、販売する物がなんであれ、商売の基本は挨拶だと思います。
「はじめまして」や「こんにちは」「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」
当たり前の文句ですが、この言葉を発する行為にただ慣れてしまわないようにしたいものです。
私はこのチラシ配りを通じて、お店まで足を運んでいただくことの大変さと有り難さを確認し、毎年初心に返る事が出来ています。
一方的な押しつけで申し訳ないのですが、できれば彼にもそういった気持ちを持って、
小さな町のいち「コーヒーマン」として世界に臨んで欲しいと願っております。

Airflow control

今回は少しマニアックな焙煎のお話です。

新しい焙煎機には、一般的な焙煎機に大抵付いている排気量調節のためのダンパーや送風ファンのコントローラーがありません。
代わりに排気ラインに組み込まれた気圧センサーとファンで比例制御を行い、直接空気の圧力、流れをコントロールします。
「圧力○○Pa」(単位はパスカル)と設定すると引きが強い時はファンが弱くなり、詰まった時にはファンが強く回って常に「○○Pa」を維持します。
数字を上げると抜けが良くなるのは通常のファンの操作と同じですが、入力数値は「結果」の方なので、今まで通りの考え方をしていると少しおかしな事になる場合があり、慣れが必要です。
シンプルに、その場その場で空気の流れを組み立てていく、と考えた方が良いかもしれません。
ギーセンのこの機構はある種ネガ潰しというか、マッチポンプ的な感じが無きにしも非ずですが、使ってみると中々良く出来ていて感心します。
ショップロースターと呼ばれる小型釜は大なり小なり排気のブレの問題を抱えていると思いますので、インバーター制御の次に流行るのはこういった機構かもしれません。

稼働中のセンサーの数値やファンの制御の状況を良く観察していると、本当に色々な場面で空気の流れが変わっている事がわかります。
気圧は、豆の冷却時やアフターバーナー作動時に大きく変化します。
また、中々見えにくい焙煎室の外の状況(釜と外気の温度差、湿度の変化や風の強弱)や、室内ではドアの開閉や物の配置のなどにも影響を受けます。
圧力なので豆が爆ぜた時や、釜内の空気の温度の変化によっても微妙に変化しているようです。
それら全ての変化を、かなり細かい所までセンサーが拾ってその都度制御が入っています。

目に見えない焙煎中の空気の流れの問題は、今まではカップを取りながら過去の経験と照らし合わせて都度予測→修正の繰り返しで対応してきました。
このように数値としてリアルタイムで「抜け」の変化を見ることが出来るのはやはり有り難いです。
圧力変化に対する制御のレスポンスも良好です。
特に私は火力よりもエアフローで熱量をコントロールをするタイプの焙煎をしているので、そこがカッチリしているととても助かります。

昨日は導入後初めての嫌な「春の雨」焙煎でした。
できればあまり焼きたくない、嫌な予感がムンムンする、そんな日です。
案の定、1日前、2日前とは空気の流れが全く違いました。
数値的にはベースが2~3ポイント違います。風が強かった事もあって焙煎中のぶれ幅も大きめ。
プロファイルの設定は要所要所1ポイント単位で行っていきますので、3ポイントも違えばそれはもう全く別の焙煎です。
(そりゃ難しいはず。やはり春は嫌いです。。。)
しかし、この機構のおかげで仕上がった豆には嫌な「春の味」は全く出ておらず、ブレもありませんでした。
機械様々です。ただ、あまり便利だからと言ってこういったセンサーものに頼り切っていると、
それ自体のブレや狂いに対応出来なくなってしまうので、半信半疑、数値とにらめっこしながら使っています。

機械の性能としては、使い方や場所を選ばない、かなり強力な制御も可能でしょう。
ただ、こういったものはあくまでも補助的に、小さなぶれを押さえ細かい所までコントロールするためのもの、と思っています。
出来る限りブレの少ない、安定した焙煎環境とオペレーションを整えていかないといけないのは他の焙煎機と変わりはありません。
制御がかかる度に助けられている安心感と、どこか悔しい気持ちが生まれます。
人間が勝てないセンサーは無い、と信じて頑張ってはいるものの、技術の進歩で段々勝つ事が難しくなってきています。
自身のセンサーを磨いて、できる限り機械に頼らなくてよい、無理と無駄の無い安定した焙煎を心がけていきたいものです。

組手

新しい焙煎機「ギーセン」が入って2ヶ月が経ちました。
毎日ギーセンと、そしてマイスターで焙く江口君と格闘しています。
どちらも手強く、中々勝てませんが、おかげで機械にはだいぶ馴染んできました。
ここに至るまで半年から一年くらいはかかると覚悟していましたが、目標があると早いものです。

ハンドドリップ考

先日ある企業様の社内競技会で味覚審査員としてお手伝いをさせていただきました。
同じコーヒーを、同じ道具、おそらくそれほど変わらない同じメソッドで入れたとしても、
ブラインドで飲むと別物と思えるくらい色々な味わいがありました。
やはり注ぎ方によって味はかなり変わります。

ドリップをドリップらしい手法(?)で入れた際、抽出する人によって特に変わるのは「ボディ(質感)」です。フレーバーや味の「強弱」はレシピやメソッドに因る所が大きいものの、質感だけは抽出の上手い下手がはっきりと出ます。

本当に上手な方はカッピングで飲むと少しザラザラしたコーヒーでも、抽出液はつるつる・すべすべの質感に仕上げて出してきます。下手な方はこの逆です。そういった場合は入れ方にあまり左右されない手法、浸漬式に近い形やかき混ぜる、等もそうかもしれません、とにかく豆そのものの質感をダイレクトに出しやすい方法を取る場合が多いように思えます。海外やスペシャルティ系のお店で新しいタイプのドリップ抽出が多いのは、下手に質感を損なうよりも、豆の素性の良さを誰もがストレートに表現出来るように、との配慮があるのかもしれません。それはそれで嬉しい事です。

個人的には出されたコーヒーが良ければどんな入れ方をしてもらっても構いません。ただ、世の中の全てのコーヒー豆が素晴らしい質感を持っている訳では無いので、やはり技術でもって心地よい質感に仕上げてくれる、熟練ドリップ職人、の様な方のいるお店の方が、お客さんとしては安心して行けるような気はします。

ハンドドリップ

ハンドドリップというと日本のコーヒー屋さんのお家芸といった感じがありましたが、
最近は海外の一部コーヒーシーンでも人気のようで、色々な所で見かけるようになりました。

(グアテマラでも!)

ただ、実際に海外の方やサードウェーブ系の新しいタイプのコーヒー屋さんの抽出を見ていると日本のそれとは少し様子が違っていて、どちらかというと浸漬寄り、注ぎ方というよりはドリッパーやフィルター等の器具に依存する入れ方をしているように見えます。そういった入れ方では湯温や粒度、間欠に注ぐ際のお湯の量等の調整である程度味わいを確定してしまう事が出来るため、抽出メソッドさえ確立できればドリップ抽出に不慣れなスタッフでも比較的再現性の高い抽出が行えるというメリットがあります。

一方、日本で古くから行われているドリップ抽出では、フィルターやドリッパーは抽出器というよりは「粉をホールドするための道具」程度で、抽出器の主役は粉そのものではないかなと思っております。

もちろん、ドリッパーの形状やフィルターの材質(ネルやペーパー、金属等)の違いで味わいは変化しますので、それらも大切と言えば大切なのですが、それよりもドリッパーの中の粉の層の形状、状態の方が重要という事は従来型の古式ドリップ(?)に共通して言えることではないでしょうか。

コーヒーの粉そのものが抽出器の一部だと考えると、急に抽出は複雑になり、
その分深みが出て面白いものとなります。

ある意味、抽出器であり、ろ過器でもある粉の層。
コーヒーの粉を可変式の抽出器と考えた時、お湯の注ぎ方がとても重要になってくる気がします。

粉をどう流すか(または留めるか)で抽出の条件は大きく変化します。
仕上がりの味わいをイメージしながら、どんなタイミングでどの成分をどれだけ抽出するか、
そのためにはどんな状態の粉の、どの部分に、どのように、どれくらいの量のお湯を乗せていくか、
常に考えながらお湯を注いでいかないといけません。
本当にドリップ抽出とは最初から最後まで、考えに考えて、考え抜く事だなと思いながら
日々ドリップ抽出を行っております。
(自分の店で抽出する時は焙煎の段階まで遡って考えながら抽出しますので
頭が処理能力を超えて爆発しそうになる事が良くあります;)

RMC2013

今年は個人戦の競技会の代わりに「ローストマスターズチャンピオンシップ」という
全国を5つの地域に分けたチーム戦の競技会に参加します。
こちらもコンペではありますが、ワークショップ的な意味合いも強く、地域ロースターの技術交流の場ともなっています。

今年のお題の豆はブラジルのカップオブエクセレンスという品評会で入賞したコーヒーです。
与えれた生豆を各チーム思い思いに仕上げて提出。
審査はSCAJカンファレンスの3日目に特設ステージにて公開で行われます。
今年から一部ルールが変更され、招待審査員部門はそのままに、一般審査員部門が廃止されました。これに関しては、そもそもあの場にいる人達の「一般」性が怪しかったり(笑)、また一般審査員部門と招待審査員部門とで抽出法が異なるため(濾過式と浸漬式)作った我々が飲んでも評価が逆転する事も多く(焙煎のミスを気合いの抽出でうっちゃりかましたり)、分ける必要が本当にあるのかどうか議論があったのかもしれません。

もうひとつの変更点は今年は単に順位を決めるだけでなく、カッピングをしながら審査員や他のチーム間とで焙煎に関するディスカッションを行う事。そしてその討論に、チームメンバーだけでなく、ご来場の方々も審査員のカップに比較的近いプレス抽出のコーヒーを飲みながら疑似的に参加する事ができます。これはとても面白い取り組みですね。今からとても楽しみです。

今年の九州チームには福岡からあだちコーヒーさん、オオカミコーヒーさん、タウンスクエアコーヒーロースターさん、コーヒーカウンティさん、珈琲蘭館さん、豆香洞コーヒー。熊本から南阿蘇珈琲さん。鹿児島のヴォアラコーヒーさんの8店舗が参加します。「いつものメンバー」で心強いものの、長崎や佐賀、大分、宮崎、沖縄のロースター、また新たなメンバーがいないのが少し寂しいです。扉は開いているのに、何ででしょう。私は開業一年目から参加しました。わからないなりにとても刺激になり、勉強になりました。今でも毎回得られるものがあります。参加に資格は要りません。焙煎について共に学びたいという気持ちさえあれば、若手もベテランも関係なく参加できる素敵なイベントだと思っています。「九州Bチーム」ができるくらい、もっと多くの地域のロースターに参加してもらって共に盛り上げていけたら嬉しいです。はい。

さてさて、初日は鹿児島のヴォアラコーヒーさんでミーティングとサンプルロースティングを行いました。

ミーティング後、各店舗の計11人のロースターが持ちまわりでテーマに沿ってサンプルを焼いていきます。ニハゼ終了から一分のコテコテフレンチ等も焼きました。coeのフレンチ、美味しかったですよー。

井ノ上さんのご厚意で35キロ、最新鋭の「スマートロースター」でも焼かせてもらいました。こういう機会も中々ありません。

サンプルロースターの豆をスマートで冷却。贅沢ですね。他にも秘密の方法で瞬間冷却などしてみたり、焙煎豆のクーリングに関しても色々と試しました。冷却は味づくりだけでなく、エイジングにも関わってくる部分でもあるので経時変化も追って検証します。




お昼を食べて少し観光。
これもRMCの醍醐味のうちの一つです。


霧島から鹿児島市内の店舗に移動してカッピング。
その結果より今後の方向性を決めます。

いく通りかこの豆に可能性を感じたのと、棚ぼた的な発見もありました。今年のチームのテーマを「とことん検証」に決め、「深める」よりも「探る」方向に舵を取っていく事に決めました。




二日目、三日目は場所を移して福岡へ。
豆に合った焙煎機の形式やプロファイルの違い、よく言われる「向き不向き」は本当にあるのか、等を検証すべく、ドイツ製の半熱風焙煎機とイタリア製の熱風焙煎機でパイロット用の豆を4種焼き、本焙煎ではその2つの釜×3つのプロファイルで味わいの傾向を探っていきました。


エイジング検証。


最後に皆で全てのカップをとり、どのカップを提出するかを話し合います。

最終的には2つのコーヒーに意見が分かれました。
ひとつのコーヒーはあるロースターさんが最後の最後に焼いた豆。
オーソドックスな焙煎ではありますが、愚直にひとつの道を極めていくとこうも良くなるのかと言った至高のカップでした。この豆で、この方向性で、これ以上は中々ないよねというカップ。勝ちに行くのであればこっちという意見が多かったです。ただ、同じプロファイルでいくつか焼いたうちの一つで差が付いていたと言うことは、再現性が高いとは言えないようです。真似しようにも真似できない、個人の技量に頼るところが大きい焙煎です。

もう一つは、スタンダードではあるものの、ある釜の使い方についての新しい解釈が含まれた焙煎です。また初日のサンプルの時に出た意見から作り上げたプロファイルですので、テーマとの一貫性もあります。カップクオリティとしては、荒削りではありますが、その釜では初めて使うプロファイルのわりに二回とも上のカップに近い、そこそこのものが出来て再現性は高いと言えます。

最終的には今年のテーマも含め、私たち九州チームらしいカップとして、後者のコーヒーを提出する事に決めました。このコーヒーはけして完成型ではありませんが、議論の余地が残った面白いカップだと思います。このコーヒーについて、またこの焙煎について、私たちはもっと知りたい事がたくさんあります。会場で多くの方に飲んでもらい、たくさんの意見を頂戴してさらに理解を深めていけたら幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

最後に。今回サンプルから含めると合計21バッチ焼きましたが、ただの一つも被ることなく、全てに焙煎の意図が反映されていて、そのおかげでほぼ完璧な検証が出来たと思います。チームメンバーの要求通りの物を作り上げる高い焙煎技術と、チーム方針に対する理解に感謝致します。

焙煎競技会 2013予選

今年も焙煎競技会の予選が始まっています。
予選は使い慣れた自分の釜が使える上に審査は純粋なカップクオリティのみなので、
味作りそのものはそれほどややこしくないと思います。
ただ、全員が同じ所を目指してきますので、当然ですが審査基準をきちんと把握して、
高い精度でもってギリギリまで詰めていかないと上位には残れないでしょう。
言い訳が全く出来ない状況でもありますし、決勝とはまた違った難しさが予選にはあると思います。

味わいのピークをどこにもってくるかもそのひとつ。
提出期限と審査会までには数日のギャップがありますのでエイジングも悩ましいところです。
(特に暑かったり涼しかったりの今の時期は、難しい)
焙煎後お客様にいつ飲んでもらえるのかわからない通常の焙煎と、
発送から一週間後に審査される予選、24時間後に審査される決勝とでは
焙煎も変えていかないといけないかもしれません。

今年の予選には全国から50名近くの焙煎人が参加しているそうです。
その中で決勝の舞台に残る事ができるのはたったの6名のみとかなりの狭き門。


今年私は参加しませんが、うちからは新人スタッフの江口君が参加します。
前職からすれば焙煎暦は意外と長く、うちの機械にも慣れてはいますが、
こういったコンペ的な詰めた焙煎をするのは初めてなので色々と悩んでおりました。
色々と試して、最終的に 「よくできました まる」 的なものを提出していましたが、どうでしょう。

とまれ、必ず順位はつきますので今の自分の実力を知るには良いと思います。
他人の上手を知る事で自分の至らなさを知る事ができます。
至らなさを知る事ができればそこを埋めていくのは単純な努力のみ。
結果はさておき、悩み悩んだその過程において何か得るものがあれば、
それは技術者とって大きな宝になるでしょう。
お祭り的でない、こういった業界団体が行うコンペでは、
勝つよりも負けて得るものの方が大きいと考えます。

結果発表は明日から東京ビッグサイトで行われるコーヒーの展示会「SCAJ2013」
の3日目、9月27日(金)の午後に特設ステージにて行われます。
今年はどのロースターが決勝に残るのか、今からとても楽しみです。