印度のコーヒー

一般的には紅茶のイメージが強いインドですがコーヒーの栽培も非常に盛んで300年以上の歴史があり、
実は世界第6位の生産量を誇る一大コーヒー生産国だったりもします。
今日はそんなインドのコーヒーを紹介します。

以下昨年のコーヒーマイスターセミナーの様子から。

インドのコーヒー農園です。

鬱蒼と茂るシェードツリーの下で育つコーヒーの木。

多様な生態系と微気候が他に類を見ないユニークなコーヒーを生み出します。


インドには産地や品種、製法の違いから様々な味わいや特徴をもったコーヒーが数多くあり、
その一つ一つがブランド化されています。

主に育てられているのは「ロブスタ種」という品種です。
味や香りはあまり良くないものの、病気や高温に強く収量が見込め、
普通より濃い液体も取れるため主にインスタントや缶コーヒーなどの工業用コーヒーに使われています。

一方で高品質の「アラビカ種」のコーヒーも少量作られています。
主な製法は水洗式になりますが「モンスーンコーヒー」という少し変わった製法のコーヒーもあります。
精選後湿った季節風に当てられた生豆は元の緑色から「モンスーンゴールド」と呼ばれる明るい黄色に変色します。
その過程で豆の発酵や熟成が進むと言われ、独特な香りとマイルドな味わいのコーヒーに仕上がります。
その香味はかなり個性的です。
(個人的にはインドネシアの「スマトラ式」や「エイジドコーヒー」同様、特徴的でユニークな風味を生み出すといった点において
これらの「地域の特性に合わせた精製や保管方法」等も「テロワール」に含めて良いのかな、なんて思っています。)


セミナーでは様々なインドのコーヒーをテイスティングしました。

<1>インド国内品評会 アラビカ部門1位の豆
<2>インド国内品評会 ロブスタ部門1位の豆
<3>当店でも扱っている水洗式アラビカ(品評会入賞)
<4>マラバール地方のモンスーンコーヒー
<5>「次世代スーパーロブ」と呼ばれている品種改良ロブスタ種

1はさすがに多様なフレーバーとクリーンカップ。酸の質や出方は他の産地とは少し異なる気がします。
2はロブの評価基準が判らないので何とも言えないもののクリーンカップが印象的。フレーバーはロブ。
3はうちのとロットが違うのか、過熟感ギリギリ(?)のベリー系のフレーバーと量感のある甘さ。
4はモンスーンらしい、新そばや挽き立ての小麦の様な「華やかで明るい穀物香」が印象的。
これを「枯れ」と呼ぶか「熟成」と呼ぶかは意見が分かれる所ですが個性的なコーヒーである事は間違いありません。
5はロブスタ特有の香りはあるものの<2>よりも複雑なフレーバー。
クリーンカップに加えて伸びやかで明るめの酸。他のロブスタとは明確な違いがあります。

それぞれ味わいは異なるのですが、インドのコーヒーには共通して「スパイシー」な印象の風味があります。
ご承知の通りインドはスパイス王国。
そのインドのコーヒーの中にジンジャーやペッパー、クローブ、カルダモン、ターメリックといった
様々なスパイスの香りを感じる事ができるるのはとても面白い事だと思います。
その理由は良くわかりませんが、農園ではコーヒーとスパイスを一緒に栽培するケースもあると聞きます。
コーヒーもスパイスも同じく植物を乾燥させて煎った物。
植生が同じであれば共通する香りが出たとしても不思議ではないのかもしれません。

香りの他には酸の出方や質が他の産地とは若干違う様に感じます。
高地産でも同じ標高の他の地域のものに比べると酸の当たりが柔らかく、ボリュームも少なめです。
これもインドのコーヒーの特徴の一つかもしれません。

テイスティング後、その5種類の豆で作ったブレンドをエスプレッソ抽出でいただきました。
海外ではブレンドの一部に、それこそスパイス代わりに少量のインドを混ぜるケースが多いようですが
100%インドのブレンドと言うのはあまり無いでしょう。

エスプレッソは著名なバリスタ、エリオットアベニューの波多さんに入れていただきました。
コーヒーの美味しさには「誰にいれてもらうか」も大きく影響します。
自分の様なオッサンよりもキュートなバリスタさんに入れてもらうとコーヒーが数倍美味しくなる、
忘れかけてた当たり前の法則を思い出す事ができました。

・・・話がそれました。
エスプレッソの味わいは強烈のひとことでした。
超絶ロングアフターテーストで鼻腔の奥に40分くらい香りが残ります。
質の高いカカオから作ったビターチョコを凝縮して、凝縮して、凝縮した感じ。
こんな液体は初めてでした。

煎りの深さもあって苦味は強いのですが、けして刺激的ではなくガツンと来てすっとキレる良質の苦味。
インドのコーヒーの特徴としてこの非常に高い「苦味の質」もあると感じています。
何か良い前駆物質でもあるのでしょうか。


講演していただいたコーヒーボードオブインディアの方々です。
どちらかと言えばマイナーなイメージのインドのコーヒーですが、最近では業界団体が率先して高品質コーヒーの普及活動を行っております。
特にここ数年は精力的なプロモーション活動を続けており様々な媒体で記事や広告を目にする機会も増えてきました。

ただ、様々な意味で他と違うのがインドのコーヒーです。
特徴的な酸味の質は既存の高品質コーヒーの評価基準の枠では推し量れない部分もあると感じています。
また、もう一つ特徴的だと思っている良質な「苦味」に関してはその評価軸すらありません。
(「製品」そのものを評価するワインと違ってコーヒーには「素材」評価の共通基準しかありません。
苦味は各ロースターが味作りの段階で独自に生み出すもので、それを評価する事自体にあまり意味がないからでしょう)

インドには多様なコーヒーを生み出す気候や土壌に加え、品種改良の歴史、品質向上のための高い技術や設備が揃っています。
「品質」は経済と深い所で結びついています。好況のインド。これから国内消費も伸びていく事でしょう。
色々な要素を考えてみるとインド高品質コーヒーの潜在的なポテンシャルの高さは計り知れないものがあります。
「質より量」今までの単なる工業作物という位置付けから、大国が本気で「質」を追求していた先にいったいどんなコーヒーが生まれてくるのか、今から楽しみです。
そしてそれを消費国側がどう評価していくのか、興味は尽きません。

今後のインドから目が離せません!『インド APAA ブルックリン農園』←宣伝です。

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