ドリッパーの穴

皆様こんにちは。
今日は抽出器具のお話をしたいと思います。

ご家庭で使用中のコーヒードリッパー、その「穴」をまじまじとご覧になった事はありますでしょうか。
器具によって一穴だったり三穴だったり、円錐で大きな穴が開いていたりと、色々な形があると思います。


豆香洞コーヒーでは開店以来、大分県の三洋産業さんが作っている「スリフォードリッパー」を使っています。
「プロの味わいをご家庭でも」がコンセプトのドリッパーで、うまく抽出が出来るように色々な工夫が施してあるのですが、
何よりも、作る事が出来る味わいの「幅」と、相反する味の「安定性」のバランスが絶妙で、
ご家庭で誰でも簡単に使える使い易さがありながらプロユースも十分可能という、店とお客様を繋ぐとても良い抽出器具です。


数年前にモデルチェンジしてしてそれまでの陶器(左)から磁器(右)に変わりました。
有田焼の少し青みがかった白がとても美しいです(九州新幹線の色ですね)。
信頼できる素晴らしい職人さんが型を作ってくれています。


そしてまた最近、密かに(?)モデルチェンジが行われていたようです。
左から順番に初代、二代目、三代目。
二番目と三番目の違い、パッと見て分かった方は中々鋭いです。

何が変わったかというと「穴の大きさ」。
二代目の磁器になった際に小さくなった穴が、初代ほどではないにせよ少し大きくなっています。

せっかくなのでドリッパーの穴の大きさの違いでどんな影響があるのか調べてみました。

まずはそのまま水(400mL)を通して、水が落ちきる時間を計ります。


初代。


2代目。ゆっくりと落ちます。


最新版。
初代とほぼ一緒です。

若干違いはありましたが、ペーパーを通す(300mL)と、


初代。


二代目。


三代目。

ん?あまり変わりません。

ついでにお店にあった他のメーカーのドリッパーも調べてみました。


M社製1穴。
ペーパー無しの時は一番時間がかかりましたが、ペーパーをセットするとスリーフォーとほぼ同じ。


Ka社製台形3穴ペーパーレス。


Ka社製新型3穴。
どちらもペーパー有り、無しで調べましたがサンヨーやM社に比べると早いようです。


H社製円錐1穴。
早いです。(ペーパーレスは早すぎて計測できず。。。)


Ko社製円錐1穴。H社のものに形状は似ていますがリブ(ドリッパー内の溝)の形状が違っていて、落ち方も違います。


B社製1穴。
ペーパーレスではM社とほぼ同じだったものの・・・


ペーパーを通すとかなり時間がかかりました。
見るとリブが低く、ペーパーが張り付いてしまっています。
紙が純正品で無かった事も原因としてあるかもしれません。
どこのメーカーも、ペーパーの形や厚み、粗さ等はドリッパーに合わせてきちんと設計されています。
紙はメーカー推奨の純正品を使いたいものです。

ちなみに、このペーパーの張り付き、窒息はリブが浅い、または「リブが無い」ドリッパーで起き易い現象です。
一定の速度以上にお湯が落ちることがないのでお湯がドリッパー内に留まり、抽出が安定すると言えば安定しますが、
流れに任せるしかない状況が生まれるのは淹れていてストレスを感じる方もいるかもしれません。

お湯の注ぎ方によっても大きく変わるので載せてはいませんが、一応コーヒーの粉を入れた検証も行ってみました。
粉が入るとまた落ち方は変わってきます。中には粉が入ると遅くなるものや、逆に意外と早く落ちるものもありました。
ドリッパーなのか、ペーパーなのか、コーヒーの粉なのか、どこで抵抗がかかるかによってコーヒーの落ち方は変わり、
それによって抽出の安定性や使い勝手が変わるようです。

一般的には抵抗が大きい方がその「ドリッパーの味」になりやすく、抽出が安定するため、色々な方にお勧めはしやすいです。
一方、自在にお湯を落とす事ができる技術を持った方にとっては、できるだけ抵抗の少ない器具の方がストレス無く思い通りの抽出ができると思います。

当たり前といえば当たり前ですが、コーヒー器具メーカー」が出している器具はどれもかなり研究されていて、
正しく使えばきちんと良い味が出るように設計されています。
使い勝手や出来る味わいに違いはあるものの、そのあたりは好みの範疇でしょう。

一方、器具メーカーではないオシャレ系のドリッパーは、見た目どおり、オシャレです。
形も面白いものが多く、使用や、所有の喜びを十分満たしてくれると思います。
コーヒーのおいしい、おいしくない、は一から十まで個人の主観、気持ちの問題ですので、
オシャレなドリッパーがコーヒーを「おいしく」してくれる事はあると思います。
こういったドリッパーに関しては「お湯の温度が~」とか「粉の粒度が~」とか考えるのはナンセンスです。
あまり難しく構えず、気軽にコーヒーを淹れる事自体を楽しみたい所です。

最後に二代目と三代目を実際落としてみて味を確認しました。


???
あまり違いを感じません。。。


飲み比べてみても味はほとんど一緒です。。。


データを取りながらもう一度落としてみましたが、やはり変わりません。
味の違いもほとんどありません。
(細かすぎるほど細かい事を言えば、同じ落とし方をした際に、二代目のフレーバーを6.25ボディを6とした時、
三代目はフレーバー6、ボディ6.25、といった感じになる、といった傾向があるにはあります)

私はどちらかといえば粉と相談しながらお湯を注いでいくスタイルなので、
ドリッパーによる細かなお湯の落ち方の違いはあまり気にはなりませんでした。
(というか気付いていない?無意識に手が、勝手に補正してくれているようです)
下に秤を置いたりして、お湯の注ぎ方をレシピ的にきっちりと管理していく形の抽出だとまた印象は異なるかもしれません。

お店には初代から3代目まで、全てのドリッパーを並べて使っていますが、
ドリッパー毎のお湯の落ち方の違いに敏感なスタッフもいて、
「これは浅煎り用」「これは深煎り用」と、落とし方によってドリッパーを使い分けるという、
マニアックで涙ぐましい努力をしていた事を、今回初めて知りました。

私も昔はそんな風に繊細だった気もしますが(遠い目)、いつの日からか鈍感になったというか、
あまり気にならなくなりました。
その理由として、そもそも初代のドリッパーの個体差が二代目、三代目の違いよりも大きく(苦笑)、
それらを並べて使っているうちに慣れてしまった、という事もあると思います。
また、ドリッパーの違いよりも使っている粉の状態の違い(焙煎度やエイジングの違い)の方が大きいため、
そんな細かな所まで気にしていられない、という実情もあります。

結局今回の検証から分かったのは「穴の大きさはあまり関係ないかもしれない」という事と
器具の違いは「あるようで、無い。無いようで、ある」という事。
モヤモヤしてよくわからない結論となりました。
全ては落とす人次第の様です。

ハンドドリップは面白いですね。
これからも研究を続けていきたいと思います。
器具の違いや使い方について知りたい事や確認したい事があれば遠慮なくお尋ね下さい。
カウンターマンが丁寧に説明させていただきます。

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