誰がために

先日開かれたラテアートの大会にお店が終わってから少し顔を出しました。
会場は若い人の熱気で満ち溢れていました。

流行りを通り越してだいぶ一般化してきた感のあるラテアート。
注がれるのは熱い視線ばかりではありません。
「食べ物で遊んではいけません」と言われて育った世代間のギャップもあるでしょうが、
そもそも私も含めた焙煎豆(-コーヒーの元-エスプレッソの元)を作っている側の人間は「味こそ全て」という思い込みの強さからか、
ともすると「ラテアート」や「お好きな器を選べます」の様な「見た目のサービス」を軽視しがちです。
実際それらに対する否定的な意見を耳にする事も少なくないです。
ただ「サービスとは」「おいしさとは」を真剣に考えた時、見た目はやはり重要であると私は考えています。
そもそも我々焙煎人の追及する「コーヒーの品質」や「味」だってそれが「目的」なのではなく、
あくまでもお客様の感じるおいしさにつながるための「手段」の一つ。
見た目も味も、どちらが重要と言う話ではなく、同列で語られるべきものだと思います。

ラテアートは料理で言えば「盛り付け」のようなものでしょうか。
盛り付けを軽視するプロの料理人はいません。
ありふれた料理でも気の利いた器に艶に盛り付けるだけでぐっと「おいしさ」は増します。
直接味には関係なくても、見た目の美しさは人の感じるおいしさに確実に影響を与えるのです。
これはコーヒーであっても同じ事だと思います。

コーヒーというものは基本的にはただの黒い液体で視覚的に訴える力は強くありません。
それをサービスマンの意思を表し、お客様が目で見て楽しめる、場合によっては感動すら与えるラテアートは素晴らしいサービスだと思います。
ラテアートのおかげで昔に比べてコーヒーがメディアに取り上げられる機会も増えていますし、
確実に若い方のコーヒーに対する関心も高まっています。
大げさかもしれませんがラテアートにはコーヒーの未来も詰まっているのではないでしょうか。

とはいえ。
ワカモノが盛り上がっている所を見ると脊髄反射的に
「表面的なものだけで中身が無いのでは」
と心配してしまうのがオジサンのオジサンたる所以です。
ただ、今回は20名の参加者の中から勝ち抜きで福岡チームの代表を選んだのですが、
最終的に選ばれた4人の面子を見てほっとしました。
タナカフェの田中さん、マヌコーヒーの三杉さん、レックの岩瀬さん、カフェオットーの西田さん。
4人が4人とも、意外にアートに重きを置いておらず「とにかく味重視」というスタンス。
全員エスプレッソの味に対するこだわりが強く、コーヒーの評価技術、能力もずば抜けて高い面々です。
そして実際にサービスの最前線に立ち続けている、プロ中のプロ。
まさに福岡を代表するトップバリスタです。
彼らにとってはお客さんに喜んでもらおうと味をとことん追求した結果、
最高の一杯を最高の状態で飲んでもらおうと「最後の最後まで気を使った結果」がラテアートなんでしょう。
バリスタと焙煎人、立場は微妙に違いますが
「最終的にお客様に喜んでいただきたい」
というサービスマンとしての同じ思い、目標を持つ「同志」が残ってくれた事は嬉しかったです。

会場には若いバリスタさん(&バリスタの卵さん)がたくさんいらっしゃいました。
コーヒーの入り口、切欠としてラテアートから入るというのも素晴らしい事と思います。
ただ、できれば早く憧れの先輩バリスタの姿から「コーヒーの本質」「サービスの本質」を学び
頑張ってもらえればコーヒーの未来は本当に明るいものになると思います。
「牛乳を○○本使って練習した」と自慢するより目の前のお客様においしいと思ってもらえるよう、
一杯一杯気持ちと気合を込めて作った方が本当の意味で人の心を動かすアートが描けると思いますよ。
皆さんが憧れるトップバリスタへの道もそちらの方が近いと思います。

とかなんとか。
すきっ腹にハイボールとワインを流し込み、ゆらゆらする頭で色んな事を考えた夜でした。
ああ、私もラテアート、練習せんとなぁ。。。

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コメント

  1. ウチノ より:

    Unknown
    同感です。
    [ラテアート]
    =エスプレッソとミルクのフォームがきちんとできているが前提。
    =きれいなラテアートはおいしい!
    。。。とはいえ、これだけじゃない奥の深さがあるんだけどなぁ。
    気遣い、心遣い。。。どう伝えればいいか悩みどころです。

  2. フクマメ店長 より:

    御大が!
    ありがとうございます。

    >きれいなラテアートはおいしい!

    たしかにそれは真理ですね。
    その「正義」があるからこそ、ぜひ皆さん練習に励んでいただきたいと思う反面、
    やっかいな部分でもあるかなと思っています。(そこが『ゴール』になりがち?)

    >気遣い、心遣い。。。どう伝えればいいか悩みどころです。

    お気持ち察します。
    「ドヤ顔」で出されたトリプルリーフよりも
    笑顔で出されたマーブルの方が数倍「おいしい」
    というのもひとつの真理だと思うので、
    その辺も含めてわかってもらえると嬉しいですね。

    個人的には
    「あなたの出すものは、ただの水ですらおいしい」
    と言っていただけるサービスマンに憧れます。
    生涯かけて目指すところでもあります。

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