グループ勉強会 2日目

二日目は焙煎検証でした。
トレセンの焙煎機(マイスター5)を使ってブラジル・バイアの水洗式、
ジャマイカ・ブルーマウンテン、パナマボケテのゲイシャ、の3種を焼きました。

その内の一つ。
同じ地域、同じ農園でも畝が違えばその特異な香りが出たり出なかったり、本当に不思議なパナマのゲイシャ。
高値で取引される事から産地ではちょっとしたブームになっており、
一攫千金を狙って(?)パナマ以外でも様々な国や農園で植えられています。
栽培が難しいのと、そもそも何故ゲイシャフレーバーが出るのかが分かっていないのもあって
パナマボケテ地区の「御三家」ほど凄く良いものは出ていませんでしたが、
最近は各地でポツポツとしっかりとした「ゲイシャフレーバー」を有するものも出てきています。
先日飲んだコロンビア産の物なんかは、ゲイシャフレーバーに鮮烈なピンクグレープフルーツやグァバのような香りが加わってオリジナルを超える(?)香味にドキドキしました。

ライバル出現でうかうかしていられないご当地のパナマですが、
最近では新たな香味の創出やプレミアムの付加を狙って、既存の水洗式だけでなく様々
な精製方法が試されています。

中米はナチュラルブーム?

トレセンで発見したドンパチ農園「アンウォッシュド」のパナマゲイシャ。
「ナチュラル」とも呼ばれる精製方法で中米、パナマではほとんど行われていません。
元々ゲイシャは収穫量が少ないのと、この精製方法は様々な理由でパナマでの大量生産が不可能なため
今の所は「コンペ用」「研究用」といった感じで極々少量作られているのみ。
これも元はアメリカのとあるロースターが競技会のために依頼して特別に作らせたものだそうです。
国内品評会で一位になったロットで、聞いただけで鼻血が出るくらいの価格です。

これはさすがに手が出せないので、こちらの豆を2バッチ焼かせてもらいました。

「ママカタ農園 ゲイシャ ナチュラル」
(鼻血は出ませんが、こちらも全然可愛くない価格です。。。)

パナマゲイシャと言えばエスメラルダ農園が有名ですが、
このドンパチ農園とママカタ農園も素晴らしいゲイシャを産出しています。
(と言うか、最近は。。。まあ、ロットにもよります)

ゲイシャのナチュラルは焼くのはもちろん、見るのも飲むのも初めてです。
参考に、と出されたバッハ焙煎のコーヒーを飲んでひっくり返りました。

酸の質やマウスフィールはナチュラルそのものです。
さすが蝶よ花よと大事に育てられただけあって、ありがちな熟度のばらつきや不快な味わいは全くありません。

しかしそのフレーバーが!
かなり深煎り(2ハゼピーク!)まで煎ってるのにしっかりと「ゲイシャフレーバー」が出ているのです(残っている)。

経験上、所謂「ゲイシャフレーバー」は焙煎工程のかなり早い段階でピークに達し、
中煎り以降は残ってはいてもかなり弱くなってしまうという印象がありました。
それはパナマのエスメラルダやドンパチ、ママカタだけでなくコスタリカゲイシャにしてもそうです。
拙い経験から得ていた自分の常識を見事にひっくり返されて飲みながら軽く目眩がしました。

香味の出方に違和感を覚えつつ考えてもわからないので、
ナチュラルである事を考慮しながら、とりあえず普通のゲイシャに近いイメージで焼きました。
1バッチ目であたりをつけて2バッチ目はフレーバーを立たせる焙煎。
通常のゲイシャが強く香りを出すポイントで仕上げました。

2ハゼまで残るくらいのフレーバーだったので、これはもう相当のボリュームがあるはずと期待していたのですが、
フレーバーはそこそこでまだ少し開きかけといった感じ。
酸や甘さなど他の成分は十二分に発達している(激甘です)ので所謂焼き損じではなさそうです。。。

やはりフレーバーの開花ポイントが全然違うところにあるのかもしれません。
理由は分かりませんが同農園の水洗、ハニー製法のゲイシャと比べてもそうなので精製による所が大きいのでしょう。
精製によって全く同じフレーバーの出方が異なるというのは不思議です。
豆の中で一体何が起こっているのでしょうか。興味があります。

思えば豆が違えば、まして製法が違えば味の出方が異なるのは当然で、
それはゲイシャだからといって変わらないはずです。
それでもゲイシャに限っていえば全てエスメラルダ基準で考えてる自分がいます。

先入観や素材に振り回されるのは焙煎人として良いことではありません。
ただ、ゲイシャとなると。。
その高いプレミアムはストーリーではなく「ゲイシャフレーバー」に払っているわけで、お客様の期待もそこにあるわけで。
「商品」開発として豆とどう接していけばよいのか、難しいところです。

ゲイシャは香りにとても特徴があるので焙煎や素材そのものの検証にはうってつけです。
味を整えながらきちんとフレーバーを開花させる、ただそれだけでも相当な鍛錬になります。
囚われ過ぎてもだめですが、これに関して言えば個性を殺しちゃだめ、引き出せないのはもっとだめ。
豆と向き合う姿勢などゲイシャは本当にいろんな事を考えされられます。

正直帰りの頭の中はこの豆の事でいっぱいでしたが、他にも焙煎で得る物は沢山ありました。
特にドリップ向きのコーヒーを作るためのヒントを得たのは収穫です。

今月は2回東京へ出張します。
今日からSCAJ2011カンファレンスがあります。
初日、二日目は各委員会、生産国のセミナーを受講します。
三日目は焙煎の競技会に出場します。
4日目は資格更新のための品質評価試験があります。
その間お店を空けることとなり、お客様にはご迷惑をおかけしますが、
ここで得たものはカップの品質とお客様の感じるおいしさに還元してまいりますのでどぞよろしくお願いします。

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コメント

  1. R より:

    ゲイシャN
    持ち帰った豆をお客様に試飲させてみました。

    意外とというか、深煎りが好きなお客様の中にも、あのレモンティーみたいな香味に対して好評な意見が多かったです。

  2. フクマメ店長 より:

    サンミはネガティブワード?
    コーヒーらしくないからOKなのかも。
    「酸味が苦手な方でも良い酸味は別」
    と言いますが、毎日飲みたいかというとそれもまた別のようです。

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