RMC2013&JCRC2013

今年もSCAJの展示会に行ってきました。今年で10周年だそうです。私は2008年から行ってますので6回目となります。毎年変わらないものがあり、変わったものもあり、今年も色々収穫がありました。

さて、最終日に行われたRMC、結果私たち九州チームは準優勝でした。
今年はどこも大差なく、上位陣は合計でも1点差無いくらいの接戦だったようです。準優勝は嬉しいですが、一番の勝負カップを出していればどうだったか、一番を目指していたチームメイトには申し訳ない気持ちがあります。

個人的には今年ほど順位を気にしない年はありませんでした。今年から競技の内容が変わり、よりワークショップに近い、元々の趣旨に添った形になりました。私たち九州チームも色々と検証を重ね、テーマを持って臨んだつもりです。

最後の会場を巻き込んだカッピングディスカッションは新たな取り組みでとても良かったと思います。時間の割り当て等含め詰めていけば、今後さらに良くなっていく事でしょう。今後が楽しみです。

公開討論では焙煎時間についての言及がありました。3つくらいのチームが大体同じ時間で1ハゼを迎えるプロファイルで焼いており、それより長い時間かけたものに少し、ネガティブと取ろうと思えば取れる部分(釜の味)が出ていて、それをもってカッパーの方々はビター、焙煎が深い、と仰ってましたが、これを深いと言われると辛いな、とか、そもそもこれは「深い味」なのか、とか思ったり。それはともかく、3つのカップのハゼ時間を指して「やはりこれくらいの時間が適当だ」的な話の流れになっていた様に記憶しております。

我々が持ち込んだのが全チームの中でも1番短い、1ハゼ6分、フィニッシュ8分前半という、グラフだけ見れば特徴的なプロファイルのカップでしたので、これは議論が始まる良い流れかなと思いましたが、明らかに時間の違う私達のプロファイルに関してはなぜか誰も言及することなく別の話題に。少し強引に焙煎時間の話に戻そうとしましたが叶わず、残念ながらそのまま時間切れとなりました。

その時ジャッジの方々に対して用意していた質問は三つです。

1 ブラインドで飲んだ際、私たちのコーヒーを「短時間焙煎」だと思ったか。
2 そうであれば、どの部分にそれを感じたか。
3 このカップをさらに良いものとするためには何が必要か。

私たちの提出したカップは温州みかんのようにじわっと甘く柔らかい、元は少しばらつきのある素材ではありましたが、全チームの中でも一番安定した、つまり全ての粒に火が通りきちんと発達した、優しく、しかし少し凡庸な味わいだったと思います。
会場で飲んでいただいた方々には同じ印象を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。
これは「強く」「派手で」「良い所と悪い所を併せ持った」という、
所謂一般的な「短時間焙煎」のイメージとは違う味わいではないでしょうか。

そう考えると、この「短時間焙煎」ってなんなんでしょう。
何を持って、なんと比較して、どの部分が「短い」のか。
ばらつきのある素材を「じっくりと、時間をかけて」足並み揃える方があります。コンサバで、イメージを持ちやすい方法です。今回私たちは全く違うアプローチで足並みを揃える事ができたと思います。
成分の発達にはある程度の時間が必要ですが、もしかすると思ったよりもかけなくて良い時間や、意味のない時間のかけ方等があるのかもしれません。

コーヒーの焙煎は、詰まるところ、豆に熱を入れて化学反応を進めていく作業です。
その熱の入り方には、伝導、輻射、対流といろんな形がある事を昔習いました。
その熱の入り方の中に、ほとんど時間をかける事無くカロリーを入れてしまう方法があります。
「それ」を使うか使わないかでトータルの焙煎時間は大きく変わります。

2次元的に、時間と温度上昇のグラフだけ見ていても仕方がないのかもしれません。
私はいつもそこに空気の流れをプラスして、少し奥行きを持った3次元的なグラフをイメージしながら焙煎していました。
最近、そこに「それ」、もう一つの熱の入り方を入れて考えるのがマイブームです。
そうすると、2次元的な焙煎の見方からすればまるで魔法のような、4次元ワープのような時間の短縮が起こるのは話としても面白いですね。
とまれ、時間は短縮しても、豆に入る熱量が増大し、より成分が発達するという事は現実にあるようです。

荒のある焙煎をもってきて「だから短時間焙煎はだめだ」といった話を良く聞きますが、その「タンジカンバイセン」は言葉としてはオーバーローストの逆、ようは失敗焙煎です。失敗した焙煎の味わいをあれこれ語ってもあまり意味はないような気がします。

それよりも、きちんんと焼けている事が前提(当たり前ですが)の中での(比較的)短時間焙煎では、熱の入り方のバランスで、カップの印象がはより大きく変わります。
そこを比較してよく見ていくと、どちらかといえばフレーバーや明るさ、クリーンカップ等にフォーカスを当てた従来のスペシャルティ界隈の焙煎が、ここの所少しずつ変わってきている気がします。

時間だけ見ると短くなっているので一見するとよりフレーバー、より明るく、の「もっともっと焙煎」で強さを求めているように思ってしまいがちですが、はたして。
私は、スペシャルティ的解釈の中で、香りや酸、だけでなく、焙煎の安定やマウスフィールを中心とした魅力的な「味」の形成にも注力していくと、焼き方も少し変わり、その結果として時間が短くなった、という方が正しい気がしています。

この焙煎の方法は、一見すると「普通」です。
ただ、一周回って帰ってきた焙煎、古くて新しい焙煎は、洗練されたような感じで何か違うような気もしています。
この対流熱と伝導熱のバランスに対してのアプローチ、香味に対してのフォーカスの変化は、昨今の抽出のトレンドにもつながっているような気がしてちょっと面白いです。

だらだらと書いておりますが、全部科学的な根拠があるわけでなく、
ただ鼻と舌で感じたものから想像する事を、話として面白おかしく膨らましているだけです。
焙煎人は皆こんな感じです。怖いですね。
ちょっと苦味が増した、減ったが大事件。
すぐに文学的な方向にもっていき、「あいつは魂を売った」とか言い出すのです。

焙煎人といえば。
実は私、今八王子にきています。
今日から4日間、焙煎の日本大会決勝と焙煎の合宿が行われます。
決勝に残った7名以外にも全国から数十名の焙煎人が集まります。
私は今回競技会のお手伝いと、後半は焙煎機メーカーのサポートに入りますので
間近で腕自慢の焙煎人の作業を見ることができます。役得です。

チームは違いますがRMCの参加者も多くいると思います。
少しもやもやとして終わったあの素材の焙煎について、また「焙煎」そのものについて、
夜を徹して語りあえると幸いです。
誰か、お付き合い下さいませ。

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コメント

  1. 短時間焙煎
    ブログの件、ご配慮ありがとうございました。

    この短時間焙煎の話し、興味深い話題ですが、焙煎する側からすると、釜の容量と焙煎量を記述して頂くとより具体性を持って解釈が出来ます。
    焙煎における時間は相対的なもなので、長いか短いかは何を基準に考えるかで解釈が変わります。
    しかし、何を基準にしても、「熱は、高い方から低い方にしか移動出来ない」という伝熱の大原則があります。
    やろうとしている、「それ」も大体想像はつきますが、まぁ、限界があるでしょう。大原則を超えない範囲で遊んで見て下さい。

  2. フクマメ店長 より:

    こちらこそありがとうございました
    岡崎様

    伝熱は化学、焙煎は「魔法」じゃありませんが、
    タネは知らないほうが「マジック」を楽しめると言うことも。
    当のマジシャンが仕掛けを知らないのは問題ですが(笑)
    ちなみに、20kg釜の4kg焙煎です。
    味が壊れる前、きちんと焼けてる事を前提とすると、限界は思ったより低いかも知れません。
    その狭い範囲で一喜一憂しております。

  3. 限界焙煎
    そうですね、限界はもっと低いと思いますよ。
    現実、バッハのママさんは10k釜で500g焙煎をするそうです。多分相当早い!
    5k釜なら250g焙煎でしょうか?(笑)
    何時かチャレンジしてみて下さい。

  4. フクマメ店長 より:

    Unknown
    岡崎様

    250g焙煎は昔しょっちゅうやってましたので、わりと上手な方だと思います。
    察しの通り、その検証から得たものも多々あります。

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