The Roastに関して、購入を検討されている方や現在使用中ながらも販売終了(本体のみ。生豆販売サービスは継続)に不安を抱えている方に向けて、イベントやセミナー等でお伝えしていた情報を共有させていただきます。
The Roast開発秘話
「家庭用の電気焙煎機でプロの味わいをご家庭に」
これが、Panasonicの担当の方から最初に相談を受けた際にいただいた「ベーシックサービス」のコンセプトでした。
電気式の家庭用焙煎機というものは昔からあって、私もアマチュア時代に何台か使った事はあります。また、近年は海外を中心として(とくに韓国や台湾、中国)電気式の「スマート焙煎機」の開発が盛んで、折に触れて試してはいました。小型の電気式焙煎機には人並み以上に触れているとは思いますが、その経験からも「言うは易し」で実現は難しいだろうな、と思いました。
担当の方が持ってこられた試作のベースとなる機体を使ってみて、すぐに既存の電気式焙煎機との違いやそのポテンシャルの高さは分かりました。ただ、ベース機は海外の環境下(電圧110~120V)での使用を前提としており、日本で使うにはやはりカロリーが足りていません。そのままではプロファイルの自由度が極端に低く、作ることができる焙煎度合いの幅も狭い。また、必要十分なカロリーを与えることができないため素材の味を引き出すことが難しく、電気熱風式にありがちな「何を焼いても似たような味」になってしまいます。
既存の家庭用焙煎機のように、ただ「生豆を焼いてコーヒーとして飲めるようにする」だけならそれで十分だったのですが、Panasonicが掲げるベーシックサービスの目標は 「プロがお店で提供するような味わい」×「月替わりの3種の豆の個性」×「一つの豆に対する3つの焙煎プロファイル」=9つの味わいが毎月楽しめる、というものです。「簡単ではないと思います」と正直に伝えました。
しかも
「95V(日本で供給される電圧の最低値)の環境下」
「お客様が間違えて60g入れたとしてもきちんと焼けるように」
というさらに厳しい要求もありました。
これは我々が通常使っているガスの焙煎機で例えると
「フルバッチ容量に対して120%投入×ガス圧70~80%縛り×釜の蓄熱は使えません」
と言っているのに等しく、これで上手く焼けるようにして欲しい、というのがどれだけ無茶な要求なのかは焙煎をしている人間であれば分かると思います。
「中途半端な機械を世に出しても意味がない」という意見では一致していたので、私の方でもかなり高い味作りの基準を設けて開発のお手伝いに臨みました。
正直「これが形になることは無いだろうな・・・」と思っていたのですが、そこは世界のPanasonic。毎度毎度の私の性能要求にあの手この手の改良で応え続け、一年かけて最初に掲げた高い基準をクリアする、何ならそれを超える機械を作ってきたのです。本当に凄いと思いました。
きちんとした味作りが行える機体が完成してサービスの目処が立ちました。そこからPanasonicの家庭用機器の品質基準や安全基準(我々が使っている業務用機とは比較にならないほど厳しい)をクリアすべく、さらなるブラッシュアップが繰り返されました。
私の「味作りに対する性能要求」とPanasonicの掲げる「安全基準」「品質基準」を基にした設計には相反する部分もあり、中には落としどころが本当に難しい問題もありました。それでも開発の方が開発期間終了の本当にギリギリのギリギリまで頑張って課題をクリアしてくれて「The Roast」は完成しました。私か開発の方のどちらかが折れていたら、今の形の「The Roast」は生まれてこなかった事でしょう。
ベースとなった機体がまず良かった、というのもあります。そこからさらに妥協する事なく「使う人(職人)」と「作る人(職人)」が本気でぶつかり合うと、こんなに凄い製品が出来るのだと感動しました。The Roastの開発に関わる事が出来たのは、職人としての私にとって素晴らしい経験となりました。世に溢れる製品にどれほどの作り手のこだわりが詰まっているか、とモノを見る目も変わった気がします。
いよいよ終売迫る!!
7月28日(木)に販売終了が決まっているPanasonicの「The Roast」。部材調達の関係で受注停止の状態が続いていましたが、明日7月11日(月)より再開されるとのことです。
これほどの品質と性能を持った機械がこの価格帯で出てくることはもう無いと思います。最終ロットのための部材が今回どれくらい入ってきているのか分かりません。台数には限りがあると思いますので、購入を決めている方は出来る限り早く申し込んだ方が良いかと思います。迷われている方もお早めに!