上海焙煎ワークショップ『写し焙煎競技会』~本番編~

上海展示会での「写し焙煎競技会」大会当日の様子です。


まずは早朝、審査基準の確認とすり合わせを全員で行いました。

審査項目は以下の通りです。

 ・焙煎度合い 外観上の豆の焼け具合をカラーで判断
 ・発達度合い 味わいや香りの出方も含めた火の入り具合
 ・酸味    質と強さ
 ・苦味    質と強さ
 ・ボディ   口に含んだ際の口当たり 質と強さ

これら5項目を0.5ポイント刻みの8点満点で評価していきます。
評価の基準は「良し悪し」ではなく「いかに課題の豆に近いか」です。
当然課題の豆は全ての項目が満点で、そこから見た目や味が離れれば離れるほど減点となります。
どれだけ上手く焼けたとしても、課題の豆より「美味しすぎる」と減点となるのが面白い所です。
ゴルフでいうところのドラコン勝負ではなくニアピン勝負。
「飛ばす技術」よりも狙った味に「寄せる技術」が問われます。


審査には「ねるっこ」を使用しました。
ネルドリップは味がぶれやすく、通常こういった競技会の審査には向いていませんが、この器具は再現性が高く、簡単に同じ条件で抽出が行えます。


事前に参加者にも伝えられていたレシピ(使う粉の量と挽き目、お湯の温度と量)で落とした抽出液の香味をチェックします。


味わいとは別に焙煎度合(カラー)も評価に入ります。
実物の見本豆もあるので焙煎豆の色を揃えるのはわりと簡単です。
さすがに全然違う方はおらず、よく見比べないと分からないくらいの微妙な差しかありません。
ただ、色が全く同じでも火力やエアフロー、焙煎時間など加工の工程が変わると味が違ってしまうのが焙煎の難しい所です。
同じ意図を持って近いプロファイルで焼かれた場合は豆の色付きや外観は似てきます。
逆にプロファイルが全く異なれば、色を揃えた時必ず味はずれてしまいます。
「味」と「外観」どちらもばしっと合わせるには、焙煎工程まで推察して揃えてあげる必要があるのです。


いよいよ審査開始です。
始まるまでは余裕でしたが、、、


提出された豆の予想を大きく上回る出来栄えに真剣に。


参加者の皆さん。
固唾を飲んで審査を見守ります。


集計中。トップは大接戦でした。


優勝者と準優勝者のお二方です。
おめでとうございます。

今回は課題のAの浅煎りとBの深煎りの豆は全く違うテーマを持って焼きました。
どちらもディスカバリーの特徴の一つでもある「ダンパー」の使い方がポイントで、たまたま自分の焼き方に合ってどちらかの豆の出来が良くても、同じ焼き方だともう片方が上手くいかず、総合点数が伸びない仕組みです。
焙煎豆から正確に味わいを判別してプロファイルを構築する技術、焙煎の幅、引き出しの多さも求められる難易度の高い問題だったと思います。
正直な話、両方とも上手く再現できる人はいないだろうと思っていましたが、このお二方は、Aの豆、Bの豆ともにほとんど完璧で、どちらも上位ワンツーフィニッシュ。
二人の点差もほとんどありませんでした。
聞くと同じ地域のコーヒー勉強会の仲間で、国外のローストコンペなどにも積極的に参加して技術を磨いているそうです。
中国のコーヒーマーケットはまだこれからといったところで技術者も少ないと聞いていましたが、今回の参加者の方々のように熱心な方も多く、今後が期待できます。
(私たちもうかうかしてはいられません)

『学ぶは真似ぶ』

お手本を真似る事でその差、違いを感じる感覚が磨かれ、その差を埋める過程で一つの技術が培われていく。
昔から様々な分野で技術習得のためにこの手本を真似るという方法が取り入れられてきました。
地味で時間はかかりますが着実な手法だと私は思います。

コーヒーは嗜好品です。
人によって、また時代などによっても色々な「美味しさ」があり、それがコーヒーの大きな魅力の一つでもあります。
なので焙煎人はそれぞれが求める(求められる)美味しさを各自探求していけば良いと思いますが、最終的にどんなコーヒーを作るにしても狙った味わいを正確に作れるようになるには「味を評価する技術」「焙煎工程を構築する技術」「できた味わいをチェックして修正する技術」は必要です。
この「写し焙煎」はそれら基礎的な味作りの技術習得にとても役立つと思います。
今後日本でもこのような取り組みが行われる事を願っています。


無事に終わって白酒(パイチュウ)で乾杯。

初めての試みでしたがとても楽しい競技会でした。
課題を作る我々の方もまた多くの事が学べました。
(準備段階から同じ豆を100回くらい焼いたのでこの焙煎機の理解も少し深まった気がします)
貴重な機会を与えてくださった富士珈機さんに心から感謝致します。
この写し焙煎競技会の様子はメーカーのサイト、小坂さんのコラムにより楽しく、より詳しく掲載されています。
(当ブログの写真も大半は小坂さんにお借りしたものです;)

小坂さんコラム「珈琲場風」

LINEで送る
このエントリーを Google ブックマーク に追加
Pocket

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*