大会に向けて(2)

焙煎には製品を作る「本焙煎」の他に、その前段階で「サンプルロースト」という工程があります。
サンプルローストは極少量の豆を焼くため、通常小さなそれ専用の機械を使います。
競技会ではサンプルローストで焼いた豆は審査の対象とはなりませんが、
それで生豆の素性やポテンシャルを測り、使う豆の選定や味作りの方向性を決めるので、実はかなり重要な工程となります。

今年の世界大会では韓国のメーカー3社がサンプルロースターを提供してくれています。
一つはオーソドックスなタイプです。
PROASTER THCR01
熱源はガスと電気があります。
会場にあるのはどちらでしょう。

残り2機種は電気式の少し変わったタイプです。
韓国の展示会で見ましたが、日本で販売していない事もあって使った事はありません。
その練習をするために先月は韓国にも行ってきました。

一つはこちら。
テグにあるメーカーが作っているCeroffee CRF-800という機械です。
ソウルの営業所にお邪魔して使わせていただきました。

おむすび型の可愛らしいマシンです。


斜めに設置された遠赤外線ヒーターの下を豆がコロコロ転がる面白い仕組みです。


マイコン制御です。
本体のタッチパネルやパソコンに繋げて色々な事が出来るようです。

もう一つはStrongholdというメーカーの機械です。

こちらも電気式です(熱源はハロゲンランプ)。


最新の電気式は細かなコントロールが効くものの、熱量や火の入り方がガスとは違うので注意が必要です。


お店のマシンを使って稽古を付けてくれたのは2012年の韓国チャンピオン、180CofeeRoastersの李さんです。
2013年の世界大会で共に競い合った仲間で、韓国に行った際にはいつもお世話になっています。

コーヒーの焙煎はとても地味で孤独な作業です。それは競技会でも同じです。
あまりに地味すぎて、日本大会は無観客試合、世界大会も他の部門の競技は全てインターネット中継があるのに焙煎部門だけそれが無い、くらいに地味です。
ただ、その裏の準備に関しては、本当に多くの方々に派手に参加・協力をいただいております。
私の時もそうでした。(初めての大会で分からない事が多すぎたため、もっと多くの方に手伝って頂きました)
実際に現地で渡された生豆を見て、釜の状態を見て、その場の感覚で全てを決めて行くのは選手一人ですが、
競技会というかなり特殊な環境で「普段通り」の感覚でもって作業を行うのはとても難しく「チーム」による準備や現場でのサポートが重要になってきます。

今まで色々な競技会に選手として、またお手伝いとして関わってきた中で感じてきた事の中に、
どの競技会にも会場には「準備が出来ている選手」とそうじゃない選手がいる、という事があります。
準備が出来ている選手は競技者に何が求められているか、自分がそこで何を為すべきかがはっきりと分かっているので、
段取りや競技を行う動きに淀みが無く、淡々と行っている様に見える競技の中に自信を感じることが出来ます。
逆にそうでない選手は「?」マークを抱えながら手探りで競技を行っている感じがあり、それがどこかに必ず出ています。
それは結果にも表れていて、極端な話ルールを知らなくても、現場で競技を見れば上位に残る方というのは、分かる方には分かるような気がします。

世界大会には各国の競技会の優勝者が集います。
とてつもなく高いスキルを持った上に、何を為べきかも皆当然分かっています。
全員が優勝候補と言って間違いは無いでしょう。
そのような中、本当に多くの方々の協力のお陰で、私達の代表も何とかスタートラインに並ぶ事が出来たと思います。
後は本人次第です。相手がある事なので結果をコントロールする事はできませんが、
気負わず、背伸びせず、準備した事だけを粛々とこなす事が出来れば、きっと良い焙煎が出来ると思います。

豆香洞競技心得三箇条(?)
 1. 120%以上の準備をする。
 2. 難しいことはせずに実力の80%を確実に出す。
 3. 結果を爽やかに受け入れる。
どれも簡単な事ではないけど、実際に全部出来れば最高だと思います。

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