Airflow control

今回は少しマニアックな焙煎のお話です。

新しい焙煎機には、一般的な焙煎機に大抵付いている排気量調節のためのダンパーや送風ファンのコントローラーがありません。
代わりに排気ラインに組み込まれた気圧センサーとファンで比例制御を行い、直接空気の圧力、流れをコントロールします。
「圧力○○Pa」(単位はパスカル)と設定すると引きが強い時はファンが弱くなり、詰まった時にはファンが強く回って常に「○○Pa」を維持します。
数字を上げると抜けが良くなるのは通常のファンの操作と同じですが、入力数値は「結果」の方なので、今まで通りの考え方をしていると少しおかしな事になる場合があり、慣れが必要です。
シンプルに、その場その場で空気の流れを組み立てていく、と考えた方が良いかもしれません。
ギーセンのこの機構はある種ネガ潰しというか、マッチポンプ的な感じが無きにしも非ずですが、使ってみると中々良く出来ていて感心します。
ショップロースターと呼ばれる小型釜は大なり小なり排気のブレの問題を抱えていると思いますので、インバーター制御の次に流行るのはこういった機構かもしれません。

稼働中のセンサーの数値やファンの制御の状況を良く観察していると、本当に色々な場面で空気の流れが変わっている事がわかります。
気圧は、豆の冷却時やアフターバーナー作動時に大きく変化します。
また、中々見えにくい焙煎室の外の状況(釜と外気の温度差、湿度の変化や風の強弱)や、室内ではドアの開閉や物の配置のなどにも影響を受けます。
圧力なので豆が爆ぜた時や、釜内の空気の温度の変化によっても微妙に変化しているようです。
それら全ての変化を、かなり細かい所までセンサーが拾ってその都度制御が入っています。

目に見えない焙煎中の空気の流れの問題は、今まではカップを取りながら過去の経験と照らし合わせて都度予測→修正の繰り返しで対応してきました。
このように数値としてリアルタイムで「抜け」の変化を見ることが出来るのはやはり有り難いです。
圧力変化に対する制御のレスポンスも良好です。
特に私は火力よりもエアフローで熱量をコントロールをするタイプの焙煎をしているので、そこがカッチリしているととても助かります。

昨日は導入後初めての嫌な「春の雨」焙煎でした。
できればあまり焼きたくない、嫌な予感がムンムンする、そんな日です。
案の定、1日前、2日前とは空気の流れが全く違いました。
数値的にはベースが2~3ポイント違います。風が強かった事もあって焙煎中のぶれ幅も大きめ。
プロファイルの設定は要所要所1ポイント単位で行っていきますので、3ポイントも違えばそれはもう全く別の焙煎です。
(そりゃ難しいはず。やはり春は嫌いです。。。)
しかし、この機構のおかげで仕上がった豆には嫌な「春の味」は全く出ておらず、ブレもありませんでした。
機械様々です。ただ、あまり便利だからと言ってこういったセンサーものに頼り切っていると、
それ自体のブレや狂いに対応出来なくなってしまうので、半信半疑、数値とにらめっこしながら使っています。

機械の性能としては、使い方や場所を選ばない、かなり強力な制御も可能でしょう。
ただ、こういったものはあくまでも補助的に、小さなぶれを押さえ細かい所までコントロールするためのもの、と思っています。
出来る限りブレの少ない、安定した焙煎環境とオペレーションを整えていかないといけないのは他の焙煎機と変わりはありません。
制御がかかる度に助けられている安心感と、どこか悔しい気持ちが生まれます。
人間が勝てないセンサーは無い、と信じて頑張ってはいるものの、技術の進歩で段々勝つ事が難しくなってきています。
自身のセンサーを磨いて、できる限り機械に頼らなくてよい、無理と無駄の無い安定した焙煎を心がけていきたいものです。

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