焙煎競技会 グラフから見えるもの

ご無沙汰しております。
大会が終わり燃え尽きて、帰国してからは少し体調を崩していましたがだいぶ落ち着いてきました。
ブログも少しずつ書いていこうと思いますのでよろしくお付き合いくださいませ。
焙煎大会の様子についても、日本大会の残りから順を追って上げていく予定です。

と、その前にひとつだけ。

世界大会では順位の発表とともに上位3名のローストのプロファイルが公開されました。
同じものはこちらのサイトcropsterでも公開されております。
参考になるし、素晴らしい焙煎も沢山ありましたのでここはぜひ選手全員分発表して欲しい所です。

この時の焙煎について何件か問い合わせがありました。
グラフだけでは読み取れない部分もあると思いますので、どれだけ需要があるかわかりませんが、
意図する所や当時の環境について少し書き記しておきます。

下のグラフが私が大会で提出した豆の焙煎ログです。

まあ、なんというか、美しくは、ないですね

※データロガーのスイッチと私の相性が悪すぎて、
実際の焙煎開始とログのスタートのタイミングがどちらも2~3秒ずれています。
グラフでは温度が違いますが、実際の投入温度はどちらも190℃で一緒です。
この操作ミスに対するペナルティで無駄に4点を失いました。

私はブレンドを作ったので、二種類の違うコーヒーを焙煎しました。
上のグラフの赤い線Aがメインに使った(約8割)エチオピアのナチュラル、
青い線Bがちょい足しのエルサルバドルウォッシュトです。

それぞれブレンドの中での役割、目指す味わいが異なりましたので、
二つのコーヒーには全く違う焙煎を施しました。

豆の特徴を出来るだけ残して引き出せるように、どちらも比較的短時間の焙煎を想定していましたが、
前日のプラクティスで思った以上の排気の強さを感じたため、そこからさらに少し短めで焼いています。

その短い時間の中でそれぞれ6、7回の火力操作を行いました。
AとBでその操作のタイミングや数値が全く違うので、ログだけ見るとなんだか忙しない、
場当たり的な焙煎に見えますが、火力操作やその意図する所は先に焙煎計画書として提出しており、
これで一応予定通りなのであります。

今回は焙煎工程を4段階に分けて考えました。
計画書では[Impregnating][Dehydrating][Roasting][Development & Caramelization]と説明しています。
(実際には全て繋がっていると思うのであくまでも便宜上、
言葉も言葉遊びというか、イメージが伝われば、といった感じです)。
その各ステージで過不足なく狙った熱量を豆に入れる事を目指しました。

短時間でオーバーローストを防ぎつつ、しっかり火を通して成分を十分に発達させるには、
焙煎機の釜肌や熱風の熱の量、そしてバランスを細かくコントロールする必要があります。
今回の競技には「ギーセン」というオランダの焙煎機が使われたのですが、
ドラムの蓄熱性が思いの外高く、それはそれで機械として良い面ではあるものの、
いつも自分が使っている機械と比べると火力変化に対する反応があまりにも違い過ぎて、
操作にはかなり気を使いました。

イメージとしてはドラムの熱量の「貯蓄額」を考えながら騙し騙し焼いていく感じでしょうか。
苦肉の策、とまでは言いませんが、もう少し機械に慣れれば4段階をさらに細分化して
またその間間も調整して、もっと伸びやかでスマートな焙煎ができたかな、とは思っています。
なんにしても精一杯の焙煎ではありました。

対する他の国の代表は流石に上手な方ばかりで、
こっちが必死になって乗りこなしている機械を涼しい顔してスイスイスイと、
シームレスとでも言いますか、とてもスムースな焙煎をされていて唸らされました。
細かくみればお国柄や人柄も出ていましたが、基本的には豆にストレスを与えることなく、
シンプルに火を入れていく方が多かったように思います。

お国柄と言えば、自分の焙煎は他の選手にはどう映ったのでしょう。
(忙しないな、とは思われたでしょうが。。。)
全選手の焙煎を見て後から考えると、

この、丸で囲んだ30秒~40秒間は「和風」なのかな、など。
良し悪しはさておき、これを入れると前後をうまく調える必要があり、
競技の事だけ考えると入れない選択肢もありましたが、ここは遊びと言うか、
ちょっとした拘りなのでありました。

〔追記〕
機械の設置状況や設定に関して。
安全面からか、今回排気のコントロールは[Auto]に固定されていました。
(スタート時の送風ファンのインバーターが何kHzかは確認できず)
実際の排気の強さを表現するのは難しいですが、感覚的には日本の代理店で練習させてもらっていた
環境(35kHz×アフターバーナー)の2割増し程度、マイスターでいうと、
ニュートラルがアロマ6.0-600rpmの時のアロマ7.2-1200rpm、くらいでしょうか。
ダクトの取り回しが相当怪しかったものの、意外と引いてたので驚きました。
引きの強さ(抜け具合)のわりに温度の上がりは早かったので、
ガスの設定はわりと高めだったのかもしれません。
ドラム回転数は、任意の回転数に変える事ができましたが、
思うところあって私はどちらも[44kHz]に固定して使いました。
日本では30kHz~40kHzで練習していましたので結構な混ぜ混ぜ具合です。
ウクライナの選手が積極的に回転数を変えるシャレオツな焙煎をしていたのが印象的でした。

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コメント

  1. 原あつみ より:

    ギーセン
    後藤様
    私共はギーセンを4月に購入して焙煎しているので、このプロファイルは何度もじっくり読んでいます。cropsterにも行って研究しています。ふたつ質問があります。(1)かなり早い焙煎で、しかもファーストクラック(ごめんなさい。日本語では何て言うのでしょうか?1はぜ?)から90秒でドロップですか?相当RDが短いですね。まだ全部の豆がFCを終えていないのでは?(2)ターンアラウンド(これも日本語では何て言っているのですか?)の温度が135度くらい(?)でしょうか?そこから6分くらいで200度強までもっていくって、相当がんがん温度を上げていっているのですよね。エチオピアの豆って堅いのですか?競技はSet Tempを使ったのですか?その場合、何度に設定なさったのでしょうか?
    たくさん質問してごめんなさい。よろしくご回答お待ちします。

  2. フクマメ店長 より:

    Unknown
    原様

    こんばんは。

    (1)について

    仰る通り、FCは完全に終わらせずに、その途中で出しております。RDは100秒前後、最長でも105秒の予定でしたので、90秒のドロップは短めとはいえ、計画上は、そこまで早くもなかったりします。

    (2)について
    競技は私はSetTempは使わずに、マニュアル(? パーセント表示のガスプレッシャーコントロール)で使いました。競技焙煎は短い時間の中で繊細な火力コントロールが求められるため、他の国の選手もSetTempはほとんど使っていなかったように思います。

    プロファイルは豆の状態を見ながら作っていきました。
    その際クロップスターはRoRの管理がし易いのでとても便利でした。普段はストップウォッチとにらめっこしながら、頭の中で計算、計算、計算、です。エチオピアの豆は特別固くもなかったです。

    「早い」というのは相対的なものですので、何と比べて早いのか、もポイントになってくると思います。

    忘れてはいけない条件として、この焙煎豆が
    「24時間後に」
    「SCAAのフォームで」
    「カッピング方式で」
    評価されるという事です。

    そして
    「焙煎計画書に記載した通りの香味が再現されている」
    という事も大きな評価ポイントとしてあります。
    (競技では全選手同じ豆を使いますので、その中からどれだけ多種多様で魅力的な香味を引き出せるか、がとても重要です)

    当然、一粒一粒がきちんと焼けている事は大前提としてありますが、その中で、競技としての上の条件を考えると、1週間~2週間、場合によっては1ヶ月以上美味しさをキープしなければいけない「通常の焙煎」とは火の入れ方は変わってきて当然だと思います。

    何のために、誰のために、どんな美味しさが求められているのか。審査員もお客様であると考えた際に、お客様の「おいしい」の要求が変われば、できる限りそれに応えていくのもコーヒーマンのあるべき姿だと思います。そして、焙煎で出来ることも沢山あると思います。

    長くなって申し訳ありません。
    結局何が言いたいかというと、この競技焙煎のプロファイルの数字をそのまま通常の焙煎の参考にしても、あまり、というか、ほとんど意味が無いかもしれません。

    このグラフで参考になるとしたら、190度で投入してターンアラウンド(日本では「ボトム」とか「中点」と呼びます)が135度まで落ちているという所でしょうか。
    ギーセンの釜の特性(とくにドラムの)を考えると、ここは、通常の焙煎にも何かしら使えそうです。

  3. 原あつみ より:

    ありがとうございます
    後藤様
    ご回答ありがとうございました。ひとつひとつがとっても納得できるおはなしで、初心者ロースターとしては、ものすごくありがたいです。そうですね、カッピングの審査のためのローストということですね。審査員もお客様ではあるけれど、カッピングは通常のコーヒーの飲み方とはかけ離れているので、テイスティングをするのなら別ですが、、、と思ってしまいましたが、それでもお客様としてローストするというのが、コーヒー豆一つ一つを大切に扱う、コーヒーを愛するプロの心なのでしょうね。結局、自分で飲んでみて、自分の好みでローストの仕方が決まってくるのでしょう。私たちは、何しろ、自分の畑のコーヒー豆しか(今のところ)ローストしていないので、その点楽なはずですが、それでもやはり毎回違います。豆も生きているのですね。どうもありがとうございました。また何かあったらコメントさせていただきます。

  4. 原あつみ より:

    今一度気がついたこと
    もう一度後藤さんのコメントを読んで、ハッとしました。「お客様の『おいしい』の要求が変われば、できるかぎりそれに応えていくのもコーヒーマンのあるべき姿だ」。たしかに。始めは、自分たちがおいしいと思ったローストで供給して、フィードバックをいただいて、それに応じて焼いていく。今はそんな感じでやっています。それも自分の豆だからできることで、各国の違う種類を色々ローストするとなると、大変。それが仕事だといってしまえばそれでおしまいですが。またそれが楽しいともいえますね。一種類でこんなに楽しいのだから。。。

  5. フクマメ店長 より:

    原さま
    こんにちは。わかりにくいデータで申し訳ありませんでした。
    私たちは産地の方々に作ってもらった豆を、大事に使うしかないのですが、ご自身で育てた、本当に愛着や思い入れのあるコーヒーを焙煎できるのは本当に羨ましい限りです。ギーセンは色々操作できる所が多い上に、ひとつ変数を変えればそれにきっちり反応してくれる機械だと思うので、色々試してみるのも良いと思います。(迷路に迷い込まないように注意しながら、ですね)

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