上海焙煎ワークショップ『写し焙煎競技会』~準備編~


上海の展示会では3日目に小型の焙煎機ディスカバリーを使った「写し焙煎競技会」という焙煎ワークショップを行いました。

ルールはこうです。
参加者は審査会の前日に上海市内のショールームに集合し、煎り具合の違うAとB2種類の「お題」の焙煎豆と、その生豆をそれぞれ100gと1kgずつ受け取ります。
そこからまず課題の焙煎豆の味を確認して焙煎工程を推察し、ディスカバリーを使って生豆を焼きます。
(審査の際の抽出器具とレシピは公表されるので、その場で焼いた豆を本番同様に淹れて確かめる事も可能です)
最終的に自分で焼いた豆の中から「これだ」という物をAとBそれぞれ100gずつ焙煎プロファイルを添えて提出します。
提出された豆は後日イベント会場にて誰のものかわからない状態で審査されます。

焼き豆の出来を競うコンペ形式のワークショップですが、審査の評価基準が単純な「おいしい」「おいしくない」「良い」「悪い」ではなく、いかに課題の豆を真似たか、「どれだけ『近いもの』が焼けたか」というのが一般的な競技会と違う面白い所です。

富士珈機さんとしても初めての試みとの事ですが、20名の参加枠が募集開始1分で埋まったらしく、昨今の中国のコーヒー熱の高まりを感じます。

競技会に先立って、日本で同じ豆と同じ焙煎機を使い事前に焙煎プロファイルを作りました。

小型焙煎機「ディスカバリー」


課題豆の一つはこちらのグアテマラ。
プレミアムな袋に入っています。
もうひとつはエチオピアのナチュラル(サンイルガチェフェ)を使いました。


中煎りと深煎り、それぞれ10種類くらい作ったものの中から特徴的で分かりやすいプロファイルをいくつか選抜して、課題として適した(焙煎の意図が分かりやすく説明もしやすい)ものを田原さんにカッピングで選んでもらいました。
審査用のコーヒーの抽出はカッピングではなく「ネルっこ」によるドリップ抽出で行います。
その時に使う共通の抽出レシピも森光マスターに作っていただきました。


上海に着いたその足で田原さんと二人で市内のショールームに向かい、課題豆と振る舞い用の豆を焙煎しました。
ディスカバリー焙煎機は容量が250gと小さいので計60回くらい焼かないといけません。
一人2台ずつ、4台の焙煎機を同時に使ってどんどん焼きましたが、それでもかなり時間がかかります。


課題作りなのでただ焼けば良いというものでもありません。
焙煎データを取りながら事前に作ったプロファイルに沿って焼き、設置状況の違いからくる個体差や蓄熱度合い、環境の変化などからくるブレ等を修正しながら焼き進めていきます。
全バッチ味をチェックして、プロファイルの整合性だけでなく、きちんと味に分かりやすい「焙煎の意図」が反映されているものを選別していきます。
「合格品」は後に全部まとめてブレンドして、選手と運営側全員に同じ豆が行き渡るようにしました。

通常の焙煎なら体力が続く限りいくらでもいけそうなものですが、2台同時に扱いながら、お互いの仕上がった豆の味をチェックしながら、自分の方のマシンの調整もしながら、と何時間もぶっ通しで行うのは思っていたよりも大変で、体よりも先に脳が疲れ、頭がシュワシュワしてきます。
10バッチ目くらいから妙に集中力が増してきたものの、20バッチを超えたあたりで徹マンの朝4時頃的な変なテンションになり、25バッチを超えて、28バッチ目に完全に電池が切れました。

冷却中の豆に生豆を混ぜてしまうという初心者にありがちなミスをやってしまって、ギブアップ。
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一方、中煎り担当の田原さんは、タフです。
30バッチをきっちり焼き終えてこの表情。
若干グロッキー気味ですが、私よりもだいぶ元気です。
ただ、途中何度も写真のローヤル3kg釜をすりすりしながら
「これで一発で焼きたい。。。」
と、心の声が外に漏れてしまっていました。
私にも同じ悪魔のささやきが聞こえましたが、ディスカバリーのセミナーなので、ちゃんと真面目に焼きました。

中々ハードではありましたが、久々に心が擦り切れるほどの焙煎体験ができました。また、機械の個体差やガス圧の変動など、自分の機械だけ使っていては分かりにくい事まで確認できる良い機会ともなりました。

富士珈機のスタッフの方々のサポートのおかげもあって、準備万端で二日後の本番に臨む事ができました。
<続>

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